2017年10月の衆議院選挙では全国で与党である自民党候補が多数当選を果たしているのに対し、沖縄は米軍基地を巡って辺野古への基地移設への理解を求める自民党と、移設に反対する「オール沖縄」候補との対決は、移設反対派に軍配が上がる結果となりました。
沖縄にある米軍基地問題が今回の衆議院選挙に与えた影響はどのようなものだったのでしょうか。
■今回の衆議院選挙について
今回の衆議院選挙は、突然希望の党が旗揚げを発表し、民進党が合流したかと思えば分裂するという、国民が政治家と政党に振り回されただけの選挙と言えるのではないでしょうか。
全国では自民党が大きく圧勝した地域がほとんどであったのに対し、沖縄県内ではまったく逆の結果となりました。
名護市にある辺野古沿岸部での基地建設を進める自民党し対し、それに反対する「オール沖縄」の候補者が1区、2区、3区でそれぞれ自民党候補を振り切り当選を果たしています。
2014年に行われた前回の衆議院選挙でも、辺野古基地移設反対派である「オール沖縄」候補が自民党候補を押さえて当選を果たしており、沖縄県民の辺野古基地移設反対の意志は強いことがわかります。
■全国唯一共産党候補が小選挙区で当選
沖縄県の県庁所在地である那覇市を抱える小選挙区1区では、全国で唯一共産党候補である赤嶺氏が当選した地区でもあります。
那覇市は若者が多いことから、比較的基地容認派が多いことでも知られています。
また、共産党を良く思わない層が一定数いること、今年の宮古島市、浦添市、うるま市の市長選挙でオール沖縄系の候補が立て続けに落選していることなどから、1区では自民党候補である國場氏が赤嶺氏に食らいつくのではないかと予想されていましたが、蓋を開けてみれば常に赤嶺氏がリードを続けている結果となりました。
■普天間基地所属の大型輸送ヘリ炎上の影響
東村高江にある民間地に米軍の普天間飛行場に所属しているCH大型輸送用ヘリコプターが不時着し炎上した事件は、衆議院選挙に大きな影響を与えたと言わざるを得ません。
米軍は今回の事故をあくまで「不時着した」と伝えましたが、県民から見れば「墜落」以外の何ものでもありません。
候補者の応援演説を行うために沖縄入りしていた岸田政調会長は、衆議院選挙への影響を最小限に抑えるべく、知事との会談や県民へのメッセージ発信など「火消し」に追われることになりました。
米軍側は事故機と同型機の4日間の運用停止を発表したものの、県民の「反米軍」の意識は更に大きなものとなり、衆議院選挙真っただ中という時期での今回の事故は、自民党候補へは大きな向かい風となったようです。
■基地問題がある限り自民党の苦戦は続く
名護市で起きたオスプレイ事故、そして今回東村高江で起きたCH53Eヘリの炎上事故は、いずれも民間地で発生した重大事故です。
基地内やヘリパッドではなく民間地という場所で起きたことで、沖縄県民のなかに「もしかしたら次は自分たちの住んでいる場所でも起こりうるかもしれない」という恐怖を改めて感じるとともに、これらの事故があってもなお辺野古基地移設を進める与党への不信感は増していく一方なのかもしれません。
野党の議員たちは選挙のときだけ「基地反対」の県民の気持ちに寄りそう公約を掲げるのではなく、選挙を経て選んでもらったからにはその公約を軽々しく破ることなく、実現に向けて努力している姿を見せ続けてほしいものです。