日本人にとって沖縄県は独特の場所ですが、海外からの観光客、特に中国、台湾、香港などアジア圏からの観光客にとって沖縄は“一番近い”日本です。そんな彼らが沖縄に来てガッカリのが「日本の○○が買いたかったのに(沖縄では売っていない)」です。消費したいのに消費できない環境、それを打開するためにイオンモールに続いてパルコの沖縄出店が決まりました。
■パルコが沖縄に初進出
都心を中心にファッションビル「PARCO」を展開するパルコが沖縄県初進出を発表しました。独特の風土を持つ沖縄への進出には多くの大手が地元企業と共同・提携してきましたが、パルコも例に漏れず沖縄県内スーパー最大手のサンエーと手を組みます。
この記者会見は2016年11月に那覇市のザ・ナハテラスで行われ、サンエーが浦添市西海岸に建設する県内最大級の複合型施設を、両社が共同で設立する新会社「サンエーパルコ」が企画・運営すると発表されました。商業施設の開業予定は2019年夏を予定し、当初の発表より約1年延びていますが、沖縄県民にとって憧れのパルコの初出店ということで期待度はより一層膨らんでいます。
現在沖縄県内最大のショッピングモールである「イオンモール沖縄ライカム」は在日米軍専用ゴルフ場の跡地で実施されているアワセ土地区画整理事業区域の商業ゾーンに建設され、商圏は沖縄本島全域だけでなく、県内外から来る観光客もターゲットとしています。
サンエーの浦添市西海岸計画は米軍牧港補給地区(キャンプ・キンザー)の沿岸の埋め立て地に「イオンモール沖縄ライカム」と同等の広さを持つ規模のショッピングモールを整備し、その隣にはすでにホテル用地も確保しておりイオンモールと同様に県内外からくる観光客もターゲットとしています。
■沖縄の消費者層に観光客は欠かせない
イオン、パルコはそれぞれのショッピングモールの設立がどちらも沖縄県初進出です。パルコの牧山社長は沖縄のマーケットのポテンシャルは確実に高まっていくと判断している」と沖縄の事業展開については万を期したと同会見で述べています。
沖縄県は観光での収益が大きく、沖縄県での商いを考えるときには地元の客だけでなく、本土の観光客と海外からの観光客も視野に入れなければいけないと言うのが常識となっています。そのため“どこにでもあるような”ショッピングモールではなく、“沖縄っぽい”ショッピングモールでなくてはいけません。
パルコはサンエーと共同することで、サンエーが今まで培ってきた経験と信用力の上に、パルコの商業施設の企画運営力を加えていく戦略をとると発表しました。サンエー側としてもパルコのノウハウを活用して店舗レイアウトやテナント構成を進めながら、沖縄県民が大切にしてきた本土の観光客、海外観光客、地元客の三つの地域の人々が融合し交流できる場の提供を目標としていると発表しました。
■沖縄への進出はアジア市場を視野にいれている
日本国内で展開する企業にとって沖縄進出はアジア市場への進出のキッカケとすることが多いです。それは沖縄がもつ地理的優位性と経済特区によるものです。彼らはまず沖縄に出店、それを足掛かりにして沖縄県内にハブとなる物流拠点を築き、アジアに向けた物流網を築くのです。
そのため沖縄県内の市場はポテンシャルが高く、今後モノやヒトの交流地点として経済的に発展していくというのが大方の予想です。また沖縄県は独特の文化を築き台湾など類似した文化をもつ国や地域と仲が良く、中国人観光客を始めとして海外からの観光客も多く、海外に自分たちのブランドを売り込むチャンスも多く転がっています。実際に中国版ツイッターである“ウェイボー“でも沖縄県の観光名所だけでなく、「沖縄で食べたもの」「沖縄のお店」など日本のものを紹介するツイートが多いです。
アジアからの観光客は「近いから」と言う理由で日本にきます。しかし沖縄は独特の風土が根付き、「日本のあの商品が欲しい」「日本のあれが食べたい」と言う彼らのニーズを今までは満たすことができませんでした。沖縄県はいままで「日本のものに消費したい」という気持ちに応えず、莫大な利益をふいにしてきました。その大きな穴を埋める手立てとなるのが大手ショッピングモールの沖縄進出です。こうして日本のもの(ジャパン・ブランド)を沖縄で売り込むことは日本の成長戦略として有効な手段だと考えられています。